2025年04月11日
2025年 第1回 定例会報告
2025年韓国OPI研究会 第1回定例会報告書
2025年度第1回定例会の内容について以下に報告いたします。
日程 :2025年4月5日(土)14:30~17:30(14:15受付開始)
実施方法:対面(檀国大学校天安キャンパス人文科学館322号室)+ZOOM
参加者:11名(対面5名+ZOOM6名)
内容:
14:30〜14:45 運営委員からの連絡事項
会長ご挨拶、年間スケジュールご案内【小島】
・定例会:第1回4月5日(土)、第2回7月予定、第3回12月予定
・3月22日(土)韓国日本語学会にて企画発表を実施した(孫、安田、後藤、小島〈敬称略〉)
・6月末に同学会の学術誌に論文を投稿する予定
2)会計報告、入会費・年会費について【後藤】
・2024年度会計報告→参加者全員のご承認をいただきました。
・2025年度の年会費(w10,000)の振り込み口座ご案内
(別途MLでお知らせしているように、韓国在住の会員様は国民銀行の口座へ、
それ以外の会員様は日本の銀行の口座へご入金願います)
14:45〜15:10 opiデモンストレーション(対面にて)
(テスター:小島、被験者:韓国人学習者・男性・大学生)
【インタビューの流れ】
出身地→家族→趣味(音楽鑑賞)→「進撃の巨人」のストーリー→日本旅行(東京、井の頭公園周辺)
→勉強している日本語科目→1日の生活について→高校と大学の生活の違い→【ロールプレイ中級】
沖縄について旅行会社の人に質問する→【ロールプレイ上級】空港で荷物が出てこないので、空港の
職員に話して交渉をする
15:00〜16:00 ◆参加全員でレベル判定と話し合い/情報共有
メインレベルは中級であることは一致していたが、上級レベルの出来具合
の判断によって、下位レベルの判定には若干の差異があった。
具体的な意見は以下の通り。
・テスターが答えを誘導してしまっていたので、受験者がどの程度
上級ができるのかわかりづらかった。判定としては中級-下?
・中級-中くらい。詳しく説明する部分(上級タスク)で挫折が見られた
(例:井の頭公園の説明)
・段落で答えているところが途中で切れている(挫折?)。上級タスク
がしっかりできているという証拠がとれていなかった。
・若者の話し方の特徴(「短く話す」)が出ていたのではないか。そのため
受験者の本当の実力(長く、詳しく話すこと)が測れていなかった可能性
がある。事前にOPIの概要や評価されるポイントを説明しておけばよか
った。
【テスター:小島の判定】中級-中
テスターとしては中級-中と判定した。受験者が質問やロールプレイの中で
中級レベルのタスクを「かなりの量と質をもって遂行(OPIマニュアル59ペ
ージ)」しているため、中級-下ではないと判断した。また、上級のタスク
もある程度は対応していた。一方でかなりの上級タスクをこなせる中級-上
には達していないと判断し、結論として中級-中とした。
16:00〜16:05 休憩
16:05〜17:30 ◆韓国日本語学会企画発表(3月22日)の報告
(1)安田佳奈枝先生
「OPIの結果を基にした外来語の発音と意味の習得-韓国語母語話者を
対象とした指導実践-」
〈研究目的〉
韓国人日本語学習者の外来語(カタカナ語)への意識を明らかにする。
また授業における指導がどの程度効果があったかを報告する。
〈調査方法と結果〉
1)事前調査として、日本で多く使用されているカタカナ語16語について
学習者の発音の誤用率を調べた。その結果、日韓で異なる単語を用い
ている語において誤用が見られた(サーティーワンアイスクリーム→
べスキンラビンス)。
2)授業の中でカタカナ語の発音指導と事前課題を行った(指導項目は、
母音+r音→長音、母音애→ア、ㅍ→ファ・フィ・フ・フェ・フォ、
트→ト、ㄱ→ク、ㅂ→プ、ㅅ→ト、ㅁ→ム、ㅇで終わる場合→ング、
意味・用法の異なる語)のち、事後テストを行った。事前課題と事後
テストを比較したところ、事後テストの結果のほうにより高い正答率
がでるという結果になった。
(2)後藤歩先生
「評価の高い発話と低い発話に見られる特徴-ACTFL-OPIのデータをもと
に-」
〈研究目的〉
属性の異なる日本語話者(A群:韓国語がわかる日本語教師、B群:韓国
語がわからない日本語教師、C:韓国語がわからない非日本語教師)にお
ける韓国人日本語学習者の発話に対する評価の差異があるのかを明ら
かにする。
〈調査方法と結果〉
韓国人日本語学習者の発話データ(36個のデータ)をA群、B群、C群そ
れぞれの日本語話者に聞いてもらい、語彙・文法・発音・流ちょうさ
・社会言語的能力の項目別に、わかりにくい項目について判定しても
らった。その結果、全体的には最も理解しにくかった項目は1)語彙、2)
発音、3)文法の順になった。A群とB群(日本語教師)は全体の結果と
同様の特徴がみられた一方、C群(非日本語教師)については3番目に
「流ちょうさ」が入っていたのが独自の特徴であると言える。
(3)小島堅嗣
「OPIとJOPTを日本語教育にどう活かすか-それぞれの利点を活かす方策
を探る-」
〈研究目的〉
OPIとJOPT双方のメリットと課題を明らかにしたうえで、それぞれのテス
トをどのように活かしていくべきか考え、提案する。
〈調査方法と結果〉
OPIのメリットはすべてのレベル(初級-下~超級)について判定可能な点と
正式なレベル判定の認定書がACTFL(全米外国語教育教会)から発行されると
いう点である。そのため、正式な認定証を必要とする受験者、就業者、
会社内の昇進試験として必要な方に適している。OPIの課題としては、テス
ター視覚取得のための時間的・費用的負担が大きいという点と、受験者側
での長い試験時間(約30分のインタビュー)と費用の負担がある。
一方でJOPTのメリットはテスター視覚が不要、テスト時間が約15分と短
い、試験費用も基本的にはかからない、学習者に合わせた領域でテストが
受けられる(アカデミック、ビジネス、コミュニティ、介護の4領域)とい
う点が大きなメリットである。半面、2023年にスタートした新しいテスト
であるだけに、特に信頼性(複数のテスターが判定した場合、判定結果が一
致するか)の面で検討が必要な側面もある。
このようにOPIとJOPTはそれぞれに受験者に適した点を備えているため、
受験者に合ったテストを選択し活用していけるようにすることが望ましい
と言える。
今回は対面でのOPIデモンストレーションを実施しましたが。参加者からのご指摘があったように、
事前にOPIの概要について受験者に説明していなかったため、受験者が通常のスタイル=手短に
話すスタイルで話していた可能性があります。つまり長く詳しく(段落レベル)話せる能力があるのにも
かかわらず、それを発揮できなかった可能性があるということです。事前に説明しておけばこのような
ことが避けられたかもしれないので、今後注意したいと思います。
今回もデモンストレーションと発表報告3件という充実した内容で実施できました。今回は対面で直接
話し合いができたという点もよかったですし、ZOOMで様々な場所にいらっしゃる方々のお話を聞くこと
ができたこともとても有意義でした。7月頃に開催予定の2025年度第2回の定例会もこのように様々な
試みをしていこうと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。
(文責:小島堅嗣/韓国OPI研究会会長)
2025年度第1回定例会の内容について以下に報告いたします。
日程 :2025年4月5日(土)14:30~17:30(14:15受付開始)
実施方法:対面(檀国大学校天安キャンパス人文科学館322号室)+ZOOM
参加者:11名(対面5名+ZOOM6名)
内容:
14:30〜14:45 運営委員からの連絡事項
会長ご挨拶、年間スケジュールご案内【小島】
・定例会:第1回4月5日(土)、第2回7月予定、第3回12月予定
・3月22日(土)韓国日本語学会にて企画発表を実施した(孫、安田、後藤、小島〈敬称略〉)
・6月末に同学会の学術誌に論文を投稿する予定
2)会計報告、入会費・年会費について【後藤】
・2024年度会計報告→参加者全員のご承認をいただきました。
・2025年度の年会費(w10,000)の振り込み口座ご案内
(別途MLでお知らせしているように、韓国在住の会員様は国民銀行の口座へ、
それ以外の会員様は日本の銀行の口座へご入金願います)
14:45〜15:10 opiデモンストレーション(対面にて)
(テスター:小島、被験者:韓国人学習者・男性・大学生)
【インタビューの流れ】
出身地→家族→趣味(音楽鑑賞)→「進撃の巨人」のストーリー→日本旅行(東京、井の頭公園周辺)
→勉強している日本語科目→1日の生活について→高校と大学の生活の違い→【ロールプレイ中級】
沖縄について旅行会社の人に質問する→【ロールプレイ上級】空港で荷物が出てこないので、空港の
職員に話して交渉をする
15:00〜16:00 ◆参加全員でレベル判定と話し合い/情報共有
メインレベルは中級であることは一致していたが、上級レベルの出来具合
の判断によって、下位レベルの判定には若干の差異があった。
具体的な意見は以下の通り。
・テスターが答えを誘導してしまっていたので、受験者がどの程度
上級ができるのかわかりづらかった。判定としては中級-下?
・中級-中くらい。詳しく説明する部分(上級タスク)で挫折が見られた
(例:井の頭公園の説明)
・段落で答えているところが途中で切れている(挫折?)。上級タスク
がしっかりできているという証拠がとれていなかった。
・若者の話し方の特徴(「短く話す」)が出ていたのではないか。そのため
受験者の本当の実力(長く、詳しく話すこと)が測れていなかった可能性
がある。事前にOPIの概要や評価されるポイントを説明しておけばよか
った。
【テスター:小島の判定】中級-中
テスターとしては中級-中と判定した。受験者が質問やロールプレイの中で
中級レベルのタスクを「かなりの量と質をもって遂行(OPIマニュアル59ペ
ージ)」しているため、中級-下ではないと判断した。また、上級のタスク
もある程度は対応していた。一方でかなりの上級タスクをこなせる中級-上
には達していないと判断し、結論として中級-中とした。
16:00〜16:05 休憩
16:05〜17:30 ◆韓国日本語学会企画発表(3月22日)の報告
(1)安田佳奈枝先生
「OPIの結果を基にした外来語の発音と意味の習得-韓国語母語話者を
対象とした指導実践-」
〈研究目的〉
韓国人日本語学習者の外来語(カタカナ語)への意識を明らかにする。
また授業における指導がどの程度効果があったかを報告する。
〈調査方法と結果〉
1)事前調査として、日本で多く使用されているカタカナ語16語について
学習者の発音の誤用率を調べた。その結果、日韓で異なる単語を用い
ている語において誤用が見られた(サーティーワンアイスクリーム→
べスキンラビンス)。
2)授業の中でカタカナ語の発音指導と事前課題を行った(指導項目は、
母音+r音→長音、母音애→ア、ㅍ→ファ・フィ・フ・フェ・フォ、
트→ト、ㄱ→ク、ㅂ→プ、ㅅ→ト、ㅁ→ム、ㅇで終わる場合→ング、
意味・用法の異なる語)のち、事後テストを行った。事前課題と事後
テストを比較したところ、事後テストの結果のほうにより高い正答率
がでるという結果になった。
(2)後藤歩先生
「評価の高い発話と低い発話に見られる特徴-ACTFL-OPIのデータをもと
に-」
〈研究目的〉
属性の異なる日本語話者(A群:韓国語がわかる日本語教師、B群:韓国
語がわからない日本語教師、C:韓国語がわからない非日本語教師)にお
ける韓国人日本語学習者の発話に対する評価の差異があるのかを明ら
かにする。
〈調査方法と結果〉
韓国人日本語学習者の発話データ(36個のデータ)をA群、B群、C群そ
れぞれの日本語話者に聞いてもらい、語彙・文法・発音・流ちょうさ
・社会言語的能力の項目別に、わかりにくい項目について判定しても
らった。その結果、全体的には最も理解しにくかった項目は1)語彙、2)
発音、3)文法の順になった。A群とB群(日本語教師)は全体の結果と
同様の特徴がみられた一方、C群(非日本語教師)については3番目に
「流ちょうさ」が入っていたのが独自の特徴であると言える。
(3)小島堅嗣
「OPIとJOPTを日本語教育にどう活かすか-それぞれの利点を活かす方策
を探る-」
〈研究目的〉
OPIとJOPT双方のメリットと課題を明らかにしたうえで、それぞれのテス
トをどのように活かしていくべきか考え、提案する。
〈調査方法と結果〉
OPIのメリットはすべてのレベル(初級-下~超級)について判定可能な点と
正式なレベル判定の認定書がACTFL(全米外国語教育教会)から発行されると
いう点である。そのため、正式な認定証を必要とする受験者、就業者、
会社内の昇進試験として必要な方に適している。OPIの課題としては、テス
ター視覚取得のための時間的・費用的負担が大きいという点と、受験者側
での長い試験時間(約30分のインタビュー)と費用の負担がある。
一方でJOPTのメリットはテスター視覚が不要、テスト時間が約15分と短
い、試験費用も基本的にはかからない、学習者に合わせた領域でテストが
受けられる(アカデミック、ビジネス、コミュニティ、介護の4領域)とい
う点が大きなメリットである。半面、2023年にスタートした新しいテスト
であるだけに、特に信頼性(複数のテスターが判定した場合、判定結果が一
致するか)の面で検討が必要な側面もある。
このようにOPIとJOPTはそれぞれに受験者に適した点を備えているため、
受験者に合ったテストを選択し活用していけるようにすることが望ましい
と言える。
今回は対面でのOPIデモンストレーションを実施しましたが。参加者からのご指摘があったように、
事前にOPIの概要について受験者に説明していなかったため、受験者が通常のスタイル=手短に
話すスタイルで話していた可能性があります。つまり長く詳しく(段落レベル)話せる能力があるのにも
かかわらず、それを発揮できなかった可能性があるということです。事前に説明しておけばこのような
ことが避けられたかもしれないので、今後注意したいと思います。
今回もデモンストレーションと発表報告3件という充実した内容で実施できました。今回は対面で直接
話し合いができたという点もよかったですし、ZOOMで様々な場所にいらっしゃる方々のお話を聞くこと
ができたこともとても有意義でした。7月頃に開催予定の2025年度第2回の定例会もこのように様々な
試みをしていこうと考えています。今後ともよろしくお願いいたします。
(文責:小島堅嗣/韓国OPI研究会会長)
Posted by J-OPI-K at 18:45│Comments(0)