2023年12月07日
2023年度 第3回 定例会報告
2023年韓国OPI研究会 第3回定例会報告書
第3回定例会の内容について以下に報告いたします。
日程 :2023年11月25日(土)14:00~17:30(13:45受付開始)
実施方法:ZOOM
参加者:14名(うち日本語OPI研究会から2名、台湾OPI研究会から2名)
内容:
14:00〜14:10
・会長ご挨拶(小島)
・2023年度スケジュール
4月1日(土)第1回定例会
7月1日(土)第2回定例会
9月23日(土)韓国日本語学会@東国大学校ソウルキャンパス参加
→企画発表として4名(川口先生、安田先生、後藤先生、小島)が
口頭発表
11月25日(土)第3回定例会【本日】
12月 韓国日本語学会の学術誌『日本語学研究』第78号に、口頭発表
したうち3名(川口先生、安田先生、後藤先生)の投稿論文が掲載決定。
(小島の論文は今回掲載不可となったため、次号以降に再度投稿予定)
14:10〜14:40
opi音声(鮱名先生ご提供)を聞いてレベル判定&インタビューの仕方について検討
【インタビューの内容】
大学4年生、看護学専攻→専攻を選んだ理由→日本で仕事をした経験、仕事をして
よかったこと/大変だったこと→韓国と日本の福祉の違いについて→お金の有無に
よる差異について→人々の健康に対する意識について→読書について→活字離れに
ついての考え→デジタル化における文字教育について→最近気になるニュース(出
産率の低下)
14:40〜15:10
◆3つのグループに分かれてレベル判定と話し合い
15:10〜15:30
◆各グループ発表
話し合った結果、それぞれのグループで主に上級-中、上級-下、中級-上とい
う3つの判定に分かれました。主な判定理由は以下の通り。
上級-中/上級-下
・超級のタスクでは、裏付けのある意見が充分でなかった。
・上級のタスクはできていたが、安定していない部分も見られた(韓国と日本の
比較の部分)。質問と答えがかみあっていない部分も見られた。
・発音の問題があった(「看護」の発音が「観光・健康」と聞こえてしまった)。
・ロールプレイ(RP)がなかったので超級であるか否かの判断であったと思われる
が、今回のインタビューではRPが必要ではなかったか?
中級上
・文法や発音の間違いが多い。上級を維持しているかという点には疑問。
◇鮱名先生のコメント
・インタビューは以下の流れで設定した:【中級タスク】仕事について
→【上級タスク】ボランティアの詳細について→【超級トリプルパンチ1】
介護へのお金の使い方→【トリプルパンチ2】韓国の出産率について
・超級タスクは完全ではないが、かなりの部分達成できていた→上級-上と
判定。
・トリプルパンチ2の開始時間が遅かったので、もっと早い時点で
実施すべき(三浦トレーナーから指摘あり)。
15:30〜15:35 休憩
15:35〜16:40 企画発表の報告
(1)安田佳奈枝先生「OPIデータでみる韓国人学習者の外来語使用について
-過去のデータとの共通点と相違点-」
・OPIの中級レベルを対象に2013年以前のデータ(A群)、2023年
のデータ(B群)を比較
・B群がA群より高い割合で外来語を使用していた。外来語使用が
増加傾向にあることが明らかになった。
・発音の誤用と、会話を継続しようとするコミュニケーション・
ストラテジー(CS)を使用していた点は共通していた。
・本研究を通して明らかになった韓国人日本語学習者の問題点は、
1)外来語の発音、2)外来語を使用したCSのあり方、3)日韓外来語
の違いへの気づきの3点である。今後もこの3点と向き合っていく
ことを課題としたい。
(2)小島堅嗣「多言語の在韓日本語学習者におけるOPIデータの比較
-コードスイッチングの観点から-」
・研究動機
在韓日本語学習者に日本語OPIインタビューを行ったところ、複数
言語でのコードスイッチングが出現する現象があり、興味をもった。
・調査方法
OPIの超級/上級(4名)と中級(3名)それぞれにおいて、コードスイ
ッチングが現れたデータを5つの観点から(日本語/韓国語/中国語
フィラー、韓国語語彙、日本語+韓国語語彙)分析し、特徴を比較
した。
・調査結果
超級/上級グループではコードスイッチングはほぼ見られなかった
(日本語フィラーだけ出現した)。これはこのグループの日本語レベル
と日本語使用環境(日本でのビジネス経験)の影響が大きいと思われる。
中級グループでは韓国語/中国語フィラー、韓国語/韓国語+日本語
語彙によるものなど多様なコードスイッチングが出現していた。
このグループの日本語レベルによる影響がある。そのため、超級/上級
グループのような使用法を指導する必要がある。
(3)後藤歩先生「聞き手の理解度に影響を与える要素-日本語学習者の
OPIデータをもとに-」
・研究目的
1)非母語話者に慣れている/慣れていない聞き手では学習者の
発話の理解度に差異があるか、明らかにする。2)理解度に大き
影響がある「発音」の特徴について調査する。また「発音」
以外の要素についても調査する。
・調査方法
発表者が収集したOPIデータ7名分(上級-下3名、中級-上4名)
を対象とした。7名の音声をA群(韓国語を理解する日本語教師
)、B群(韓国語を理解しない日本語教師)、C群(韓国語を理解し
ない非日本語教師)に「理解しにくかった点」についてのアンケ
ート(Googleフォームによる)に答えてもらった。
・調査結果
全体的にC群の評価がA・B群の評価より高かった。どの群も
理解しにくい原因は「語彙」と「発音」が半数以上を占めた。
B・C群では「語用論的能力」を多く挙げる傾向もあったが、
上級学習者に関しては文法の間違いの影響は少なかった。
「語彙」に関しては語彙不足が最も理解を妨げる原因であること
がわかった。「発音」に関しては理解しにくい順にアクセント>
子音交替>母音交替であることがわかった。
17:00〜17:30 懇親会(情報交換会、希望者のみ)
・OPIテスター更新に関する情報交換→今後も更新についての
情報交換会を個別に行っていくことを確認
今回の定例会はまず、去年(2022年)OPIワークショップを受講後、
今年テスター資格を取得された鮱名先生に提供していただいたインタ
ビューデータを聞いて議論しました。GRID(判定表)の書き方等の情報
も得ることができて有意義でした。
次に、去る9月23日(土)に韓国日本語学会において企画発表した3名
による研究報告がありました。発表者の今後の研究にも役立てられる
ようなご質問やコメント等をいただき、ありがとうございました。
また今回は日本語OPI研究会(東京)と台湾OPI研究会の皆様も招待する
形で行われ、様々な情報交換をする時間も持つことができた貴重な機会
となりました。今後とも研究会間の交流を続けることで、OPI全体の活性
化につなげられればと考えています。来年度もよろしくお願いいたします。
(文責:小島/韓国OPI研究会会長)
第3回定例会の内容について以下に報告いたします。
日程 :2023年11月25日(土)14:00~17:30(13:45受付開始)
実施方法:ZOOM
参加者:14名(うち日本語OPI研究会から2名、台湾OPI研究会から2名)
内容:
14:00〜14:10
・会長ご挨拶(小島)
・2023年度スケジュール
4月1日(土)第1回定例会
7月1日(土)第2回定例会
9月23日(土)韓国日本語学会@東国大学校ソウルキャンパス参加
→企画発表として4名(川口先生、安田先生、後藤先生、小島)が
口頭発表
11月25日(土)第3回定例会【本日】
12月 韓国日本語学会の学術誌『日本語学研究』第78号に、口頭発表
したうち3名(川口先生、安田先生、後藤先生)の投稿論文が掲載決定。
(小島の論文は今回掲載不可となったため、次号以降に再度投稿予定)
14:10〜14:40
opi音声(鮱名先生ご提供)を聞いてレベル判定&インタビューの仕方について検討
【インタビューの内容】
大学4年生、看護学専攻→専攻を選んだ理由→日本で仕事をした経験、仕事をして
よかったこと/大変だったこと→韓国と日本の福祉の違いについて→お金の有無に
よる差異について→人々の健康に対する意識について→読書について→活字離れに
ついての考え→デジタル化における文字教育について→最近気になるニュース(出
産率の低下)
14:40〜15:10
◆3つのグループに分かれてレベル判定と話し合い
15:10〜15:30
◆各グループ発表
話し合った結果、それぞれのグループで主に上級-中、上級-下、中級-上とい
う3つの判定に分かれました。主な判定理由は以下の通り。
上級-中/上級-下
・超級のタスクでは、裏付けのある意見が充分でなかった。
・上級のタスクはできていたが、安定していない部分も見られた(韓国と日本の
比較の部分)。質問と答えがかみあっていない部分も見られた。
・発音の問題があった(「看護」の発音が「観光・健康」と聞こえてしまった)。
・ロールプレイ(RP)がなかったので超級であるか否かの判断であったと思われる
が、今回のインタビューではRPが必要ではなかったか?
中級上
・文法や発音の間違いが多い。上級を維持しているかという点には疑問。
◇鮱名先生のコメント
・インタビューは以下の流れで設定した:【中級タスク】仕事について
→【上級タスク】ボランティアの詳細について→【超級トリプルパンチ1】
介護へのお金の使い方→【トリプルパンチ2】韓国の出産率について
・超級タスクは完全ではないが、かなりの部分達成できていた→上級-上と
判定。
・トリプルパンチ2の開始時間が遅かったので、もっと早い時点で
実施すべき(三浦トレーナーから指摘あり)。
15:30〜15:35 休憩
15:35〜16:40 企画発表の報告
(1)安田佳奈枝先生「OPIデータでみる韓国人学習者の外来語使用について
-過去のデータとの共通点と相違点-」
・OPIの中級レベルを対象に2013年以前のデータ(A群)、2023年
のデータ(B群)を比較
・B群がA群より高い割合で外来語を使用していた。外来語使用が
増加傾向にあることが明らかになった。
・発音の誤用と、会話を継続しようとするコミュニケーション・
ストラテジー(CS)を使用していた点は共通していた。
・本研究を通して明らかになった韓国人日本語学習者の問題点は、
1)外来語の発音、2)外来語を使用したCSのあり方、3)日韓外来語
の違いへの気づきの3点である。今後もこの3点と向き合っていく
ことを課題としたい。
(2)小島堅嗣「多言語の在韓日本語学習者におけるOPIデータの比較
-コードスイッチングの観点から-」
・研究動機
在韓日本語学習者に日本語OPIインタビューを行ったところ、複数
言語でのコードスイッチングが出現する現象があり、興味をもった。
・調査方法
OPIの超級/上級(4名)と中級(3名)それぞれにおいて、コードスイ
ッチングが現れたデータを5つの観点から(日本語/韓国語/中国語
フィラー、韓国語語彙、日本語+韓国語語彙)分析し、特徴を比較
した。
・調査結果
超級/上級グループではコードスイッチングはほぼ見られなかった
(日本語フィラーだけ出現した)。これはこのグループの日本語レベル
と日本語使用環境(日本でのビジネス経験)の影響が大きいと思われる。
中級グループでは韓国語/中国語フィラー、韓国語/韓国語+日本語
語彙によるものなど多様なコードスイッチングが出現していた。
このグループの日本語レベルによる影響がある。そのため、超級/上級
グループのような使用法を指導する必要がある。
(3)後藤歩先生「聞き手の理解度に影響を与える要素-日本語学習者の
OPIデータをもとに-」
・研究目的
1)非母語話者に慣れている/慣れていない聞き手では学習者の
発話の理解度に差異があるか、明らかにする。2)理解度に大き
影響がある「発音」の特徴について調査する。また「発音」
以外の要素についても調査する。
・調査方法
発表者が収集したOPIデータ7名分(上級-下3名、中級-上4名)
を対象とした。7名の音声をA群(韓国語を理解する日本語教師
)、B群(韓国語を理解しない日本語教師)、C群(韓国語を理解し
ない非日本語教師)に「理解しにくかった点」についてのアンケ
ート(Googleフォームによる)に答えてもらった。
・調査結果
全体的にC群の評価がA・B群の評価より高かった。どの群も
理解しにくい原因は「語彙」と「発音」が半数以上を占めた。
B・C群では「語用論的能力」を多く挙げる傾向もあったが、
上級学習者に関しては文法の間違いの影響は少なかった。
「語彙」に関しては語彙不足が最も理解を妨げる原因であること
がわかった。「発音」に関しては理解しにくい順にアクセント>
子音交替>母音交替であることがわかった。
17:00〜17:30 懇親会(情報交換会、希望者のみ)
・OPIテスター更新に関する情報交換→今後も更新についての
情報交換会を個別に行っていくことを確認
今回の定例会はまず、去年(2022年)OPIワークショップを受講後、
今年テスター資格を取得された鮱名先生に提供していただいたインタ
ビューデータを聞いて議論しました。GRID(判定表)の書き方等の情報
も得ることができて有意義でした。
次に、去る9月23日(土)に韓国日本語学会において企画発表した3名
による研究報告がありました。発表者の今後の研究にも役立てられる
ようなご質問やコメント等をいただき、ありがとうございました。
また今回は日本語OPI研究会(東京)と台湾OPI研究会の皆様も招待する
形で行われ、様々な情報交換をする時間も持つことができた貴重な機会
となりました。今後とも研究会間の交流を続けることで、OPI全体の活性
化につなげられればと考えています。来年度もよろしくお願いいたします。
(文責:小島/韓国OPI研究会会長)
Posted by J-OPI-K at
08:44
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