2009年08月27日

 「第7回OPI國際シンポジウムソウル大会」報告

 櫻井惠子大会委員長から、第7回OPI国際シンポジウムソウル大会につきまして、以下の報告をさせていただきます。

 「第7回OPI國際シンポジウムソウル大会」は2009年8月19日20日の両日、「外国語教育と口頭能力評価」というテーマで、韓国のソウルにある韓国教育課程評価院を会場として韓国OPI研究会と韓国日語教育学会の共催により開かれました。

アメリカ、フランス、ベルギー、日本、韓国の5カ国から160名を超える参加者を迎え、成功裏に大会を終えることができました。後援いただきました韓国教育課程評価院、日本語教育学会、国際交流基金、ACTFL、在韓日本語講師研究会に感謝いたします。

 19日は李徳奉氏(同徳女子大学校)「東アジアにおける外国語教育と口頭能力評価」という基調講演 に始まり、OPIを理解した上で外から見たOPIの弱点、批判と共に今後のあり方を示唆してくださり、刺激的で非常によかったという声が聞かれました。

午後は 齊藤眞理子氏(文化女子大学) 嶋田和子氏(イーストウエスト日本語学校)の両トレーナーによるOPIブラッシュアップセッションがあり、斉藤トレーナーは上級のサンプルを抽出する際にどのような点に気をつけなければいけないか、判定の際しての根拠について話されました。嶋田トレーナーは超級レベルの効果的な発話抽出方法について10の質問に答える形で答えられ、マニュアルの重要性を強調されました。そのあと超級話者の実際のOPIデモンストレーションを見せてくださいましたが、被験者があまりにとうとうと話し、テスターもそれに負けない迫力で見ていた人たちは圧倒されました。

その後 東京、関西、九州、欧州、韓国の各OPI研究会から実践報告がありました。東京のOPI研究会では7月26日に「OPIの日」を設置し、ACTFLと直接交渉して一般公開のテストを実施し、予想以上にたくさんの応募者が来て、正式の会話テストに向けて一歩踏み出したという報告がありました。関西OPI研究会では OPIの技術向上とOPIに関連する日本語能力の研究開発に努めてきましたが、さらに包括的な研究と開発を目指すため「日本語プロフィシエンシー研究会」に移行する計画が発表されました。

 九州OPI研究会では少ない人数ながら、研究会活動を行なっており、欧州OPI研究会では欧州CEFR参照枠準拠の口頭能力評価法に向けてOJAE(Oral Japanese Assessment Europe)を研究開発している興味深い報告がありました。韓国OPI研究会はACTFLと直接交渉しながら独自のワークショップを9回開催しているという報告があり、各地域で抱えている課題がよくわかり、研究会どうしの情報交換、連携に有益な時間でした。

 6時半からは教育課程評価院の食堂でレセプションが開かれ、ソウル大学国楽科の学生さんたちによるカヤグムの演奏とパンソリが披露されました。韓国OPI研究会からのサプライズとして還暦を迎えた鎌田先生とお誕生日を迎えた嶋田先生への花束贈呈とケーキカットがありました。ポクプンジャ(ラズベリー酒)とビールで乾杯し、オーガニックでおいしい韓国料理を食べながらなごやかな歓談のひとときを過ごしました。

 2日目は「コンピューターによる口頭能力評価の現状と課題」というテーマで 鎌田修氏(南山大学)を座長としてパネルディスカッションが行なわれ、パネリストは 渡辺素和子氏(ポートランド州立大学) 崔正洵氏(培材大学校)朴敏瑛氏(韓国外国語大学校) 櫻井惠子氏(仁荷大学校)の4名でした。渡辺素和子氏は「ACTFLOPIc:コンピュータ化OPIの現状と方向性について」と題し、OPIcについてパワーポイントでわかりやすく紹介しました。もともとOPIcが開発されたのも韓国の会社からACTFLが依頼されたからで、15万件に上る英語OPIcの受験者のうちほとんどが韓国内で行なわれたものだそうです。

 英語、スペイン語だけでなくアラビア語、中国語、韓国語、ペルシャ語、フランス語、ロシア語、ベンガル語などが開発済みですが日本語はまだできていません。他言語のOPIcの開発は予算や研究の蓄積の問題もあり、そう簡単ではなく、今後の方向性としてOPIcと面接型とが並存するだろうと話されました。崔正洵氏は「韓国語教育におけるウエブを基盤とした口頭能力評価とOPI」という題で、ソウル大学のTOP試験、延世大学の開発したKPE韓国語能力試験、培材大学の口頭能力評価について紹介され、韓国語の話し言葉の特性と社会文化的要因の研究に基づきレベルの記述を行なわなければならないと述べられました。

 また、個別言語の評価尺度の開発とともに中国、日本、韓国、ベトナムなどの漢字文化圏の共通参照枠の開発していく課題が提案されました。朴敏瑛氏は「FLEXの現況と課題」と題して韓国外国語大学の開発したFLEXについて、詳しく紹介され、評価基準のなかでどの要素を優先するか順位の問題や身振りや表情などのノンバーバルな面をどう評価に組み入れるかについても提議されました。櫻井惠子氏は「韓国におけるコンピュータによる日本語口頭能力評価―SJPTを中心にしてー」というテーマでSJPTについて紹介し、対面OPIとの比較、OPIcとの比較を行ない、インタラクションの含まれない一方的なコンピュータによる口頭試験の妥当性の問題点を指摘しました。

 韓国におけるコンピューターによる口頭能力評価の急速な広がりに日本側の参加者が驚くと同時に、日本の遅れが痛感されたと述べた人もいます。コンピュータによる試験では大勢の人を対象に安い費用で口頭能力評価が可能になるけれども、上級の上の方や超級は扱えないという限界や双方的なコミュニケーションではないなど問題点があるが、今後ますます広がっていくだろうし、プロフィシエンシーを中心の言語教育を進めていく上では助けになるという展望が示されました。

 午後はA会場では主にOPIに関する発表が6本ありました。
①「口頭表現能力を高めるための一提言-OPI超級話者の発話調査から-」深谷久美子(成蹊大学)・有澤田鶴子(JALアカデミー)・大林惇子・片寄洋子(名古屋国際センターNIC日本語の会)・狩谷洋子(Progress Japanese Academy)・滝本いずみ((社)国際日本語普及協会)、②「OPIにおける中級から上級への叙述描写部分の縦断的分析-文と段落の結束性を中心に-」花田敦子(久留米大学)・権藤早千葉 (久留米大学)、③「インタビューにおける応答発話の終結方法-日本語母語話者と非日本語母語話者に対する調査から-」舩橋瑞貴(北海道大学留学生センター/早稲田大学大学院生)・市川明美(北海道大学留学生センター)、休憩を挟んで、④「OPIロールプレイカードの検討と提案-韓国OPI研究会での質問紙調査から-」粟飯原美智(同徳女子大学校大学院)・倉持香(弘益大学校)・林修辰(西江大学校)・韓国OPI研究会、⑤「OPI超級における敬語判定の問題点」渡辺素和子(ポートランド州立大学)、⑥「OPI発話における学習者の「聞き手の反応」 古川智樹(名古屋大学大学院国際言語文化研究科博士課程)・稲熊美保(愛知文教大学)などでした。

 B会場では主にOPIを授業に生かす発表が6本ありました。
①「韓国語教育におけるOPIの問題点と可能性」中川正臣(弘益大学)・ ウィ・ヘンニム(明知大学)、②「日本語を「使う」プロフェシェンシーについて考える-外国人のための日本語ブログコミュニティの構築-」廣澤周一(立命館大学院言語教育情報研究科修士課程)、③「自己評価に活かすOPI的手法-センター教員、学生協働参加の第2回通訳授業実践報告から-」木村かおり(早稲田大学大学院修士課程)、休憩を挟んで、④「「私的領域(場)」からみた言語活動の難易度-言語活動難易度地図の試み-」金庭久美子(横浜国立大学)、⑤「大学でのビジネス日本語教育における面接評価基準-「アジア人材資金構想」受講生のOPIデータを参考に-」金居明生(立命館アジア太平洋大学言語教育センター)・渡辺若菜(立命館アジア太平洋大学言語教育センター)・野元千寿子(立命館アジア太平洋大学言語教育センター)、⑥「教師の自己成長につながる「コース評価活動」の試みと考察 -レベル別複数クラスから成る留学生向け日本語会話コースの場合-」田仲正江(東京国際大学)・小熊貞子(東京国際大学)・遠藤藍子(昭和女子大学)などです。

 なおB会場に関しては大会準備側の不手際で発表者や聴衆の皆様にご不便をかけたことをお詫び申し上げます。

 C会場では特別企画として韓国語OPIデモンストレーション(非公式)が行なわれました。それに先立ちOPIの解説が朴蕙成氏(国立ハンバット大学校)により行なわれ、続いて韓国語のOPIデモンストレーションが李善姫氏(建国大学校)によってなされ、質疑応答 がありました。会場に入りきれない人が出るほど盛況でした。

 口頭能力評価の現状把握、実際に何をしているか、これからどこへ向うべきかの模索が今回のシンポの特徴であったという嶋田和子トレーナーの全体の総括で、2日間の充実した日程を終えました。アフターは三清洞にある韓定食の店でドンドン酒で乾杯しながら40名近くが参加して、お互いの労をねぎらい楽しい交流のときを過ごしました。

 トレーナーの先生方を始め、基調講演やパネルを引き受けてくださった先生方、研究会の報告、司会を引き受けてくださった各研究会の皆様、 評価院の場所を提供してくださり実際の細かい準備に当ってくださった李庸伯先生、早矢仕智子実行委員長をはじめとする韓国OPI研究会の実行委員の皆様、学生スタッフのみなさんに心から感謝いたします。
                                    (文責 櫻井惠子)
  


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